母とR子さんを連れてららぽーと大吉寿司でお昼。この日に実家に入った掃除業者さんの作業終了まで外で時間をつぶすのにちょうど上映時間があったので食後に4階のシネコンで見てきた。2月に以前の職場の先輩につきあって観た「PERFECT DAYS」同様、今回も全くの予備知識どころか映画の宣伝さえ事前に見たこともなかった作品。一言でいうならふざけていない大泉洋。
名古屋で小さな町工場を経営する坪井(大泉洋)は自社の製品を国内で売れなくても海外で販路を求めるなそ、諦めることなく働いて家を不在にしているが、そのように働くのは先天的に心臓を患い、10歳の時点で余命10年と宣告されている次女佳実(福本莉子)の治療のため。素人ながらに心臓病についても妻陽子(菅野美穂)共々勉強を重ね人工心臓の制作について希望を見出すが、医学研究者たちからは全く相手にされない。それでも自費を投じ借金を重ね設備を整えて試作に試作を重ねる。その熱意にほだされるように次第に若い医師たちからの信頼や協力を得ていくが、臨床試験目前の段階で上層部の判断で研究は中止となる。一方で佳実の病状は心臓以外の臓器にも影響を与え、絶望する坪井夫婦と姉妹たち。それでも佳実本人は自分と同じような境遇の患者たちの役に立ててほしいと家族を励ます。そんな中、研究の最初の段階で人工心臓は最初から無理なものを坪井に安易に期待を持たせるだけだと研究グループを離れていった助手富岡(松村北斗)の言葉をヒントに、坪井は人工心臓での実験の成果のバルーンカテーテルへの応用ができないかと考え、事故が多かった海外製のものよりも優れた国産のバルーンカテーテルの製作に取り組み始める。
主人公自体のバイタリティがそもそも半端ないのだけれども、それでも折れそうになると妻が背中を押すし、妻が絶望していると今度は佳実本人、そして姉妹が、という形で立て直し、そこに工場や研究所の人々が力を添えていくという流れ。「まず意志ありき」を具現した映画だった。
個人的に一番印象に残ったのが、研究者でもなんでもない主人公が研究所に押しかけて行って「あなたは一体何者ですか」と誰何され即答で「私は誰よりも人工心臓を実用化したい者です」と迷いなく言いきる場面。細かい言葉づかいは違っていたかもだけれども、とにかくついて出た言葉が、過去の町工場の具体的な製品よりも、まだ何の形もなく可能性も勝算も全く見えていない人工心臓への「意志」。
まったく話は関係ないけれど、実は個人的に「簡潔な自己紹介」という宿題をかれこれずっと抱えているのだけども、何をしてきたというほどのキャリアでもなく今していることと言ったら親の送り迎えの合間に書類の確認や税金の払い込みくらいのことだし、何かを目指すにしても幸か不幸かそんな切羽詰まった願望というか意志の手前の動機もなかったりで、さてどうしたもんかいな、と。
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