八月納涼歌舞伎三部「狐火」

遊びをせんとや

久々の三部制。今年は一部も二部も見たい演目&配役ではあったのだけど、体力とスケジュールの兼ね合いで新作の第三部に絞る。

狐花(きつねばな) 葉不見冥府路行(はもみずにあのよのみちゆき)

原作脚本:京極夏彦 演出:今井豊茂 書き下ろし新作の初演

当主の帰りを待つ信田の家に、不穏風の音に怯えるように響く赤ん坊の声。賊が屋敷を囲んでいるという知らせに当主妻美冬(笑三郎)は赤ん坊を下男(金吾)に任せて落ちのびさせる。やがて賊が信田の当主の首を持って押し入り、その場にいた者を皆殺しにした上で美冬を我が物としてしまう。

場面が変わり、暗い舞台に赤々と咲き広がる曼殊沙華の先に赤い鳥居。白い狐の面をつけた男(七之助)の行く手を阻むように立つ「憑き物落とし」と名乗る男(幸四郎)。謎めいた問答の後、狐面の男は憑き物落としを振り切って鳥居の奥の社へと消えていく。

さらに作事奉行上月監物(勘九郎)の一人娘雪乃(米吉)が数日前から垣間見るようになった曼殊沙華の着物の美しい男・萩之介(七之助)の姿を求めて、止める老女中松(梅花)を振り切るように墓所に分け入る。雪乃と共にその男を目にしていた別の奥女中お葉(七之助)は萩之介が姿を見せるようになって以来畏れ慄いて寝込んでしまい、自分の命も長くはないので近江屋娘(新悟)と辰巳屋娘(虎之介)とを最期に呼び寄せてほしいと願い出る。一連の騒ぎに監物と腹心的場佐平治(染五郎)は彼らの過去の悪事に何か関わりのある事ではないかと訝しみ、武蔵晴明神社の宮守である憑き物落とし、中禅寺洲齋を屋敷に招く。

萩之介は実はお葉と近江屋娘、辰巳屋娘の人が過去に謀って殺し死んでいるはずの男。以降、辰巳屋、近江屋に相次いで不幸が降りかかり、洲齋が萩之介の正体に迫る甲斐もなく、絡み合った因縁は悲しい結末へと動いていく。

今月は初日が遅めで翌日にはすでに飛行機の予約が入っていたので初演初日の観劇に。中禅寺洲齋役はどうしても理屈っぽく長々しい台詞の連続で、さすがの幸四郎さんもまだ台詞のテンポが少々こなれていなかったような。京極夏彦の原作をそのまま舞台に、ということ自体がすでにすごいんだけども。

米吉くん、新悟くん、虎之介くんの若手女形三人がそれぞれチャーミング。米吉くんのヒロインは単に発情期なお嬢さまではないし、新悟くん虎之介くんもそれぞれ性格の悪さ全開にしてるのにどっか可愛い。

幸四郎丈と勘九郎丈はニンとしては配役を入れ替えてもおもしろそうな気がする。とはいえその場合、七之助丈演じる萩之介のと洲齋との位置づけが微妙だったりするか。萩之介の役は七之助丈への当て書きではないかと思うほどなのだけど、いつか染五郎君にも演じてみてほしいような。とは言え染五郎くんが女形を経験する機会は少なそうなので実現性は少なそう。

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