秀山祭九月大歌舞伎

遊びをせんとや

夜の部と散々迷って今月は昼の部。

摂州合邦辻 合邦庵室の場

年若い義理母に迫られて困惑する俊徳丸の配役は、立役から女形まで器用になんでもこなせる愛之助さんももちろんいいんだけど、まだ今なら線の細さを残す染五郎くんで観たかったような気も。菊之助さんの玉手御前を観るのは2回め、というか他の人の玉手見たことない。邪恋と見せかけて実はお家騒動を収めるための画策、という筋書きなのだけど、そう言いつつも結局かなり本気で俊徳丸に迫ってる、綺麗なんだけど気味悪いほどの情念が渦巻いた、ぬるん、とした独特の佇まいの所作。

1773年大阪初演。管専助、若竹笛躬合作。妹背山婦女庭訓の近松半二と同時代。「寅の年寅の日寅の刻生まれの女の肝の血が解毒になるとかいう謎設定は当時そういうの流行っていたんだろうか?お三輪のときは「爪黒の鹿の血と嫉妬に狂った女の血」だったっけ。

余談だけど「婦女庭訓」は「太宰館花渡し」と「吉野川」が夜の部で上演されるため今月は花道が東西に二本。「三笠山御殿」ほど頻繁には上演されないから幕見ででも観に行きたかったのだけど、正直八月の(主にキモチの面での)ダメージ引きずってて、ここにもう1日お出かけを入れる気力枯渇。

沙門空海唐の国にて鬼と宴す(しゃもんくうかいとうのくににておにとうたげす)

初演2016年歌舞伎座、夢枕獏原作。今回は弘法大師御誕生1250年記念での上演なんだそう。

空海と橘逸勢のコンビは安倍晴明と源博雅を思わせる。幸四郎丈演じる空海は晴明のイメージに対して妙にテンション高いにしても。

歌舞伎を観るようになった当初は古典を中心に見るようにしていたせいか初演のときは観に行っていなかった。でも気がつけば最近は平成以降の新作の方を優先して観に行く方が多いのは、むしろ新作が再演される頻度の方が少ないということに気がついてしまったから。

でも実際のところそうやって初演なり再演なりで1度観て、以降また再演されたら絶対観に行くし!って自分が思った作品がどれだけあるかというと、やっぱり答えに詰まってしまう。

それだけに時代を超えて今日まで何度と演じられて古典として残るその時点ですごいことだとしか。

余談だけどそういう意味では局を変えキャストを変えて繰り返し何作も撮影されて今もBSなんかで何度となく繰り返し再放送されている、例えば「浅見光彦」シリーズなんかももはや古典の域。

コメント

タイトルとURLをコピーしました