七月大歌舞伎夜の部。

遊びをせんとや

今月は昼が團十郎「星合世十三團」、夜は高麗屋三代出演「裏表太閤記」。「裏表~」は三代目猿之助の初演以来四十八年目の再演、「星合~」も令和元年の團十郎襲名公演が初演と新作の域。前者はもちろん後者についても三代目猿之助四十八撰を思わせる作品、ということでどちらも澤瀉屋色全開。それだというのになぜ、ここに四代目猿之助がいないのか。と言うても詮無いことと分かってて言ってしまうが。

さらに言えば團子ちゃんも今年は「ヤマトタケル」に専念なのかここに不在。代わりにということでもないけれど、高麗屋三代出演の方が謳い文句だし、実際澤瀉屋の主要後継者抜きで成り立ってしまってるのだ。和睦のため鈴木孫市(染五郎)が父親の首を秀吉(幸四郎)に渡すに当たって秀吉が「おぬしも天晴な父を持った」と褒めるシーン、ここで笑いが取れるのも幸四郎染五郎の実の親子配役があってのこと(しかもその寸前まで父鈴木重成を演じていたのも幸四郎)。澤瀉屋の面子ではこのくすぐりはできないだろうし、やった日には笑えないどころでは済まない事故にもなりかねない。

それでもやっぱりこういう演目がかかれば四代目の舞台を、あの口の横のドヤ皺を見たいと思ってしまうこの気持ちをどうしてくれるんだまったく。ということも一旦脇へ避けて、今目の前の公演を。

備中高松城水攻めに鈴木孫市なる人物もその父も史実では出てこないし、それ以前に松永弾正と明智光秀が実は親子という設定だったりで、今月の演目は学校で習ったことは一切忘れて見るべし。単純にスペクタクルに申し訳のストーリーが乗ったものとして早変わりや本水、宙乗りといった歌舞伎の外連を楽しむのが正しいということをイヤほど教えてくれるのが今月の演目で、自分もなんだかんだ、原点に返って楽しんで帰ってくる。

一応備忘にこの日の召し物。紺の紗にマジェンダのアジサイ柄。去年は結局夏物に袖通さないままだったのを反省して気合入れて着たつもりが帯締めが若干、いやかなり不格好でしおしお。

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